特集 「それは古い!」と言われない 診療スタンダードUp to date
【総論】
臨床疫学が教える診療スタンダード
川村 孝
1
1京都大学健康科学センター
キーワード:
エビデンス
,
臨床研究
,
デザイン
,
疫学
,
統計学
Keyword:
エビデンス
,
臨床研究
,
デザイン
,
疫学
,
統計学
pp.484-487
発行日 2014年6月15日
Published Date 2014/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103230
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エビデンスの必要性
急性心筋梗塞が発症した後にはしばしば心室性の不整脈が出現し,これが生命予後を左右することが知られている.この知見に基づいて心室性不整脈の重症度(Lown分類)が決められているのだが,だからといって急性心筋梗塞後に生ずる心室性不整脈に対して抗不整脈薬を投与すべきであるということにはならない.急性心筋梗塞患者にVaughan-Williams分類Ⅰc群の抗不整脈薬であるエンカイニドやフレカイニドを投与すると,期待に反してかえって寿命を縮めることが判明したのである(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)1).反対に,心室筋の収縮力が著しく低下した拡張型心筋症の患者に対してさらに収縮を抑制するβ遮断薬を投与するなど,通常の臨床感覚ではとうてい思いつかないことであるが,実際にやってみるとなぜか予後を改善する2).では,実際に体験したことが大事だからといって,自分自身の臨床経験でものを言ってよいだろうか.
畏友・浜島信之名古屋大学教授から教えてもらったこんな話がある.ある日,病院の医局に製薬会社のMRさんがやってきて,「先生,新しい薬が出ました.切れ味いいですよ.ぜひ使ってみてください」と言われたので,試しに使ってみることにした.5例に投与したところ5例ともよく効いたので,さっそく同僚にも勧めた.
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