特集 気絶するほど悩ましい―危険な失神の見分け方
【総論】
危険な失神にはどのようなものがあるか
鈴木 昌
1
1慶應義塾大学医学部救急医学
キーワード:
心原性失神
,
反射性失神
,
ショック
,
迷走神経反射
Keyword:
心原性失神
,
反射性失神
,
ショック
,
迷走神経反射
pp.10-14
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103073
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失神患者の診療は危険か?
失神診療では器質的疾患の鑑別が最も重視されることは言うまでもない.器質的疾患とは,各種のショックの原因疾患である.失神は一時的な血圧低下による全脳虚血に伴う意識障害であるから,一時的とはいえショックが原因となる.したがって放置すれば致死的となる.このような疾患による失神はおおよそ10%と報告され,そのうちの10~30%程度が早期に死亡している1~4).すなわち,失神患者の1~3%が突然死予備群である.
例えば,虚血性胸痛を主訴にした救急患者のほぼ50%が急性冠症候群や急性大動脈症候群と診断されるので,虚血性胸痛は危険な症候であることを誰もが認識しており,鑑別診断やリスク層別化も体系化されている.一方,致死的なイベントが1~3%程度の失神では,日常診療で遭遇する患者のほとんどが予後良好であり,臨床医は失神を危険な症候とは認識しえない.しかし,致死的なイベントは決して稀ではなく発生するのである.そして,失神はありふれた症候で,患者数が多いので,予後不良の失神の患者数は少なくないはずである.安易な診療は危険な見落としを生むであろう.また,誤診されていても,誤診されていることに気づかないことも多分に考えられるのである.
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