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Case
患者:68歳,男性.直腸癌術後,局所再発・多発肺転移.
6年前に直腸癌手術(人工肛門)し,3年前に局所および肺転移再発.化学療法を続けてきたが,効果が乏しくなり,3カ月前に緩和ケアに専念する方針となった.緩和ケア科は化学療法中から関わってきたが,肺転移に伴う呼吸苦があり,モルヒネ徐放剤を20mg/日から開始し,1カ月前には60mg/日へ増量.在宅酸素も導入.徐々に衰弱が進み通院困難となったが,「自宅で過ごしたい」という本人の希望もあり,当院から往診導入とした.内服も困難となり,座薬使用も旧肛門付近の腫瘍増大にて困難なため,モルヒネ皮下注を30mgで導入.エチゾラム0.5mgの舌下投与などを併用しながら自宅で過ごし,在宅導入2週間後に永眠された.
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呼吸困難は終末期の患者において頻度が高い症状のひとつであり,在宅ケアの継続を困難とするひとつの要因になっている.当院において2010年1月から2012年12月までの3年間で,在宅で診療した199例のがん終末期の患者のうち,120例が最終的に入院し亡くなっているが,その入院の契機となった身体的な要因のうち,最も多いのは「呼吸苦」であった(33例:28%).また,これまでの研究において,緩和ケアでセデーション(J1)の導入となる身体症状としても「呼吸苦」は上位(せん妄13.1%に次いで2位,11.5%)であり1),コントロールが難しい症状であることは,実臨床でも実感される.
それでも,なるべく自宅で過ごしたい,という本人の思いを支えるには,適切なアセスメントに基づいた薬物療法ときめ細かいケア,本人・家族の不安への対応などが重要である.
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