特集 不明熱診療最前線―基本アプローチから「横綱級」困難症例まで―
【コモンな不明熱へのアプローチ】
在宅でみる不明熱診療のピットフォール
高山 義浩
1
1沖縄県立中部病院感染症内科
キーワード:
在宅医療
,
終末期医療
,
搬送基準
Keyword:
在宅医療
,
終末期医療
,
搬送基準
pp.474-477
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102875
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Case
悪性腫瘍終末期の在宅高齢者に認めた発熱
21時,訪問看護師から緊急コールがありました.在宅で診ている70代の男性が,今日の夕方から発熱して,先ほど悪寒戦慄を認めたとのこと.神経膠芽腫の多発転移を認める終末期で,なるべく自宅で残された時間を過ごしたいと希望されている方です.訪問看護師の報告では,血圧143/76mmHg,脈拍104回/分,体温38.4℃,呼吸数14回/分,SpO2 96%.呼吸器症状,消化器症状もなく,発熱以外に明らかな症状はないようです.
40分後,自宅に到着して診察を始めます.ご本人は「苦しくないし,どこも痛くない」と言われますが,入院になるのを怖れているのかもしれません.頭頸部,胸部,四肢に異常所見なし.下腹部を押すと違和感を訴えられます.直腸診では軽度腫大した前立腺を触れ,軽い圧痛を認めます.また,自排尿は若干混濁しており,すぐにテープ式尿検査を実施すると白血球(±),潜血(+1)と出ました.尿路感染と判断するには弱々しい所見です.
さて,困りました.尿路感染はあるかもしれませんし,前立腺炎も否定はできませんが,少し決め手に欠けています.病院へ搬送して精査すれば,臨床情報が揃ってきて病態が明らかになる可能性はあります.ただ,搬送するだけでも体力が奪われますし,自宅で過ごしたいというご本人の意向に添えなくなります.
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