提言
生活行為の改善の可能性をあきらめず真摯に向き合う心構え=OT愛
中森 清孝
1
Kiyotaka Nakamori
1
1介護老人保健施設加賀のぞみ園
pp.636-637
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590070636
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OTと愛こそ私の原点
私がまだ学生のとき,模擬事例を演じる作業療法士(以下,OT)に対する一連の評価後に,約20名のOTからフィードバックをいただいた.そのとき,臨床実習指導者から「お前には愛が足りない」と伝えられた経験が「OT」と「愛」の出会いであり,OT愛を考える始まりであった.私にとって衝撃的な出来事であり,鮮明な記憶として残っている.
実習期間中,担当した患者(以下,担当者)とのかかわりを通して,「愛」を経験した出来事があった.担当者は脳血管疾患による左片麻痺で,半側空間無視と注意障害のため,作業療法室(以下,OT室)までの移動はリスクを踏まえて毎日迎えにいく必要があった.学生だった私は,毎日病室に出向き,挨拶し,見守り主体でOT室までお迎えすることが大切であると考え,継続した.日数が重なるとともに,病室とOT室の車いす移動が見守りで往復できた喜びや,担当者が大好きなお花をモチーフにした座位バランス訓練用具を私が手づくりし練習効果を共有できたときの笑顔は忘れられない.そして,実習後半のある日,私が迎えにいくことがあたり前だった担当者が,「(私に)会いに来た」と1人で車いすを操作してOT室に来られたのだ.病室とOT室の道のりを考えると,最大限の能力を発揮しなければ達成できない行動だと気づいたとき,実習を忘れて目頭が熱くなったことを覚えている.私にとってOTと愛が重なった“宝物語”である.そして,OTとして約10年が経過したころ,作家 灰谷健次郎の愛の言葉に運命的に出会った1).
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