シネマ解題 映画は楽しい考える糧[70]
「コンフィデンス 信頼」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.354
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102823
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この不条理,あなたはどう思いますか
ちょっと想像してください.ある日出かけた先から自宅へ戻ろうとすると,見知らぬ人が近づいてきて,「家には帰るな,夫も娘も逃げた,家には軍があなたを捕えようと待ち構えている.今からある場所へ行き,新しい身分証明書と今後についての指示を受けなさい」と言われたとします.指定された場所に行くと見知らぬ男が,あなたの過去をすべて捨て,今までの人間関係すべてを忘れ,新しい名前を使って新しい家で生活を始めるよう指示します.見知らぬ家に行くと,どこの誰だかわからない初対面の男が夫として同居することになっていました.このような状況に陥ったら,あなただったらどう思いますか.
これが本作品の主人公の状況です.第二次世界大戦終戦間近のハンガリー,ブダペスト.一般市民として普通に毎日を送っていた30代前半の主婦カタリンは,赤の他人のヤノシュという男といつ終わるともしれない生活を始める破目に陥ります.娘と夫の消息は杳として知れません.外出も許されず隣人も信用できませんでした.ナチスドイツの占領下,夫が反抗活動に関わっていたために生じた事態で,レジスタンスの仲間たちがカタリン一家を保護したわけです.
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