検査の苦労ばなし
信頼できるデータ
中村 隆
1
1山形大医学部
pp.866-867
発行日 1977年11月1日
Published Date 1977/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201505
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仙台に住んで早いもので既に50年になる,ある日の午後孫が遊びに来たので,ふとこれから蔵王に行ってみようと連れ出し,車で数時間で蔵王の頂上お釜に至り,夏だというのにスキーしてる人たちをながめ,また山の素晴らしさにしばらく浮世の塵を払い除けて何か浄(きよ)められたようなさわやかな気持となり,山形上の山温泉に降り夕食し,少しくつろいで半日を大いに楽しんで,夜のとばりのおりるころ無事帰仙した.
かつては,汽車で大河原まで行きバスで青根に着き,歩いて峨々温泉にたどりつき1泊し,朝4時ごろ起きて頂上まで何度も何度も休み,その間汗を流し疲労困憊してようやく頂上をきわめ,途中一休みすることに下界をながめ眺望を楽しみ,登れば登るほど視界が開け美しさを増し,これが疲れをいやし,一汗ふいた後に飲む水のうまさに元気をとりもどし,四囲の景色,近くの花にみほれて来てよかったとしみじみ感じ,頂上でも苦労して登っただけに去り難く,結構に感嘆し時間気にしながら下山し,かつて沢庵和尚流浪の地として,また歌人斎藤茂吉で有名な上の山温泉のいでゆにつかって疲れを落とし,翌日バスで山形駅に出て汽車で帰仙したことを想い出して,誠に今昔の感を味わった.今の忙しい日々でも車では半日で俗世を離れて自然に親しむことができるのであって,到底3日もかかっては蔵王にもそう気安くは行けない,とは思う.が果たしてどちらがよいのか,それぞれによさのあることは分かるが,結論は簡単でないとしみじみ思うた.
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