東西南北
信頼
土岐 雄三
,
東 辰三
1
,
東条 貞義
2
,
田辺 敏郎
1全国信用保証協会連合会
2トウジョウウェザー社
pp.13
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914221
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心から人を信ずる—ということは,ナマナカのことではない。某年某月,小生は福岡板付空港で,上り便を待っていた。飛行機は定時をすぎても一向に出そうにない。ロビーの日本人は,みな焦立っていた。その折,ベンチに顔みしりの外人が,悠揚せまらず,泰然としているので,「飛行機がおくれてお困りでしょう」と話しかけたら,彼曰く,「担当の人たちは,みなそれぞれ一生懸命やってるでしょうからね,あくせくしても仕様がないでしょう」とすましている。各人が持場持場で,全力をあげている,それを信じようではないか,ということであった。焦立った私は恥しかった。誰もが,全力をつくし,職責を果しているのに飛行機は出ない。それには,それなりの事情があるのだろう,ということだった。なんでもない事のようだが,民主主義の第一義がそこにあるように思った。自分が職場で全力投球していなければ生れない「信頼」である。
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