現代のカルテ
活字だけでは信頼できない
野口 肇
pp.48
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203135
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1966年というあたらしい年は,不幸にも,南ベトナムの戦乱,アメリカの北爆であけました.これまでにアメリカは精鋭をほこる第七艦隊を総出動し,沖繩や日本本土の海・空軍基地をフルに活用しています.1目に30回以上の波状攻撃をせっせとくりかえしており,兵員も年頭以来40万を投入すると,おそろしく強気です.40万といえば15年まえに「国連軍」の名で朝鮮戦線に派けんした数をうわまわります.その場合軍事専門方面の定評ですが,現在のように最精鋭のジェット大型爆撃機が平均10台に1台おとされ,せっかく数年かけて訓練したパイロットを失なうのは,むろん相手がわに多くの損害を与えるとはいえ,バランス・シートではひきあわないことになります.つまり物のいきおいで意地になって戦局を拡大するのだが,深いりするほどアメリカの苦悩は大きくなる一方のようです.それにアメリカ国内でも反戦気分が強まり,焼身自殺が二つ三つおこり,国際世論から孤立の色をまし,いちばんかんじんな北ベトナム政府がいっこう悲鳴をあげるどころか,ますます闘志をもやし米軍撤退を第1の条件にしているのです.
そんなわけでアメリカのあせりは,だんだん常軌をそれてきた感じがあります.
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