Editorial
これから何をしよう
松村 真司
1
1松村医院
pp.1
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102701
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新しい年がきた.時の流れとは恐ろしいもので,終わったばかりと思った正月が再び近づいてきて,気づいたらそんなことが何年も続いて,その間隔は加速度がついて短くなっている.ある心理学者によるとこの現象は「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する」という法則に基づいているそうで,つまり,私の5歳の次男が感じる1年は彼の人生の5分の1を占めるが,45歳の私が感じる1年は私の人生の45分の1に過ぎず,すなわち私の1年の心理的長さは彼の9年分に相当する,というのだ.この法則の真偽のほどは定かではないが,換言すると相対的に残される未来の長短によって,時間の主観的なとらえ方が異なる,ということだ.
相対的な未来の長短以外にも,この感覚には成長とか変化とかいうことも影響するのだろう.この間までお母さんの後ろに隠れるように診察室に入ってきた男の子は逞しい青年になって現れ,介護をしていた娘さんが今度は自分が介護を受ける立場になって診療が再開する,というような変化を,私のような立場の医師はしばしば経験する.時間の経過に伴う役割の変化.客体として感じる時と,主体として感じる時は,その相対感覚が異なるのに加え,絶対的な時の流れもまた異なっているに違いない.
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