シネマ解題 映画は楽しい考える糧[63]
「スターシップ・トゥルーパーズ」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.693
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102606
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風刺に満ちた変化球的反戦映画
巨大宇宙船に乗って地球人兵士たちが他の惑星に降り立ち,そこに住む凶暴で強力な虫たちと戦うSF作品.高校を卒業したばかりの数名の登場人物を中心に,知性を持つ虫型宇宙生物との壮絶な闘いがきわめて生々しく描かれていきます.厳しいトレーニング,三角関係,片思い,恩師,親子の葛藤,仲間の死などもあります.演出は「ロボコップ」(1987年米国),「トータル・リコール」(1990年米国),「インビジブル」(2000年米国)などで有名な,常に毀誉褒貶相半ばするバーホーベン監督.容赦なく過激な描写が連続しますので,暴力シーンが苦手な方にはお薦めできません.とても子どもには見せられない作品です.目にしていることが単なるお話で映像は作り物と明確に認識できないと,ショックを受けてしまうでしょう.絶対,R-15指定ですね.
ではなぜそんな映画を取り上げるか.それは本作が爽快感さえ感じさせる好戦的映画の体裁を取っている一方で,興味深い構成とメッセージをもっているからです.メインの物語はリズムよく挿入される政府によるプロパガンダ的ニュースによって区切られ,わかりやすく説明されていました.ニュースのメッセージは情報操作的で好戦的,明らかに大衆の洗脳を意図しており,バーホーベン監督はそれらをカリカチュアに仕上げています.
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