特集 One step up 水・電解質・体液管理
【外来・在宅で困った水・電解質・体液管理】
フロセミドから,骨粗鬆にもよく血圧にもよいと,サイアザイド系利尿薬に変えた途端に低Na血症をきたし,担当医が外来で慌てた認知症合併高齢女性
杉本 俊郎
1,2
1国立病院機構滋賀病院内科
2滋賀医科大学総合内科学講座(地域医療支援)
pp.136-137
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102421
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Case
症例:89歳,女性.身長130cm,体重32.8kg.
現病歴:リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)・高血圧・心不全・認知障害で,他院受診中であったが,担当医の転勤に伴い当院に紹介された(表1).PMRの症状は落ち着いており,浮腫なく,ステロイドにフロセミドでは骨粗鬆が進行すると思い.フロセミド20mgからトリクロルメチアジド1mgに変更した.1カ月後,著変なく,経過観察.2カ月後,患者さんが最近,同居の義理の娘さんにつらく当たるという訴えあり,家人との対応に追われた.3カ月後,検査結果をみると,低Na血症・低尿酸血症が出現しているではないか.大慌てで,GFR(glonerular filtration rate,糸球体濾過量)を下げるARBを中止,尿細管の希釈セグメントに影響するサイアザイド系利尿薬を中止し,水分制限500mlを指示し,2週後の再診時には,血清Naは132mEq/lまで改善した.その後の嫁・姑問題は小生の外来にはもち込まれていないことを考えると,小生の処方が家庭不和を引き起こした可能性が高い1例であった.
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