シネマ解題 映画は楽しい考える糧[54]
「ライフ・イズ・ビューティフル」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.1033
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102375
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強い愛が生み出す壮大な嘘
おとぎ話です.この映画の主題は死の恐怖や人間の狂気ではありません.その正反対のものです.だからこのメルヘンを観て,強制収容所の実態が描かれていないという批判はお門違いです(フランス料理屋に入って寿司がないと文句を言うようなもの).ナチス・ドイツの蛮行を知りたい場合は,アラン・レネ監督の「夜と霧」(1955年)が一押しです.
この映画のテーマは疑いもなく愛です.夫婦愛と親子愛が,愛という言葉が一番似つかわしくない舞台で描かれていると言っていいでしょう.映画の前半は主人公グイドの一目惚れと一途な求愛が楽しく映し出されます.けっこうドタバタ喜劇的でした.しかし後半では,ユダヤ人である主人公らは強制収容所に連行され,強制労働,死の恐怖,絶望などに曝されます.
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