特集 痛みで困ったとき
トピックス
痛みの測定と評価
深井 喜代子
1
1岡山大学大学院保健学研究科
キーワード:
患者の訴え
,
多次元的情報
,
家族
,
医療チーム
Keyword:
患者の訴え
,
多次元的情報
,
家族
,
医療チーム
pp.1010-1014
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102370
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痛みとは
痛みは感覚の一種で,痛覚伝導路の一部が傷害されて生じる.痛覚受容器は皮膚,深部(筋・骨とその周辺組織),そして内臓に分布する.内臓や深部で発生した痛みが体表面に投射される場合(関連痛referred pain)や,失ったはずの四肢に痛みが生じることもある(幻視痛phantom pain).痛覚には視覚や味覚,聴覚などのような快感覚がなく,ヒトにとってはただ不快な情動体験1)である.また,痛みには適刺激adequate stimulusがなく,伝導路の組織の傷害(侵害刺激noxious stimulus)や,痛覚受容器への強度の機械的・化学的刺激も痛みを引き起こす(J1).
痛みは主観的な個人体験なので,本人が痛みを認知し,「痛い」という言葉を発したとき初めて他者はその存在を知ることができる2).医療者は患者の痛みを共有することはできないが,注意深く観察することで,多くの痛み関連情報を得ることができる.たとえば,痛みのある患者の表情は概して暗く,無意識に疼痛部位をかばい,痛みが増強した瞬間,息を詰まらせることがある.
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