特集 症状別副作用逆引き事典
神経
薬剤副作用を疑う神経系症候
尾方 克久
1
1国立病院機構東埼玉病院 臨床研究部/神経内科
キーワード:
薬歴
,
病歴
,
患者の訴え
,
神経学的所見
,
総合的診断能力
Keyword:
薬歴
,
病歴
,
患者の訴え
,
神経学的所見
,
総合的診断能力
pp.352-354
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102169
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Case
42歳の男性が,身体の動きと表情が1週間前から急に乏しくなり,妻に付き添われて受診した.元々健康で,病院にかかる病気はないのに,日に日に動きが乏しくなり,言葉も聞き取れなくなって,よだれを垂らすようになったとのこと.
はじめに対応した研修医の問いかけや指示への反応に時間がかかり,動作がのろい.平熱で血圧は正常だがやや頻脈.血液検査で尿素窒素がやや高めで,頭部MRIで左大脳深部白質にT2高信号病変を認めた.脳梗塞や脳炎を考え上級医に連絡した.
上級医は妻に尋ねた.「最近,診療所やクリニックから処方され飲みはじめた薬はありませんでしたか?」すると妻は「仕事がきついと言って会社近くのクリニックに先々週かかり薬を処方され飲んでいました.身体のことではないし,病院じゃないので,さっきは言いませんでした」.塩酸チアプリドとスルピリドとメトクロプラミドが処方されていた.入院し補液を行い,内服薬を中止したところ,1週間で回復した.頻脈と尿素窒素上昇は脱水によるもので,補液で改善した.頭部MRIは偶然みつかったラクナ梗塞で,退院時に神経学的異常所見はなかった.
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