特集 痛みで困ったとき
対応に苦慮する痛みの診断と治療
口内痛・舌痛
北原 和樹
1
1日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座
pp.996-997
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102364
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口内炎・舌痛症の原因と病態
口腔の特徴は,①常在微生物が存在する,②唾液で湿潤している,③粘膜は抗感染力が強く治癒力も高い,などである.そして,硬い歯と柔らかい軟組織が混在するため,口腔粘膜に発現した疾患は典型的な症状が持続しないのも特徴である.その基本的な症状は,水疱,紅斑やびらん,潰瘍,白斑などが主体であるが,経時的に変化し,病態も多彩である.また,その原因も①感染症,②アレルギー,③自己免疫疾患,④栄養不良,⑤原因不明,などさまざまである.具体的には,①はウイルスや真菌感染など,②は薬物アレルギー,③は天疱瘡や類天疱瘡,全身性エリテマトーデス,Behçet病など,④はビタミン欠乏や鉄欠乏など,そして⑤は再発性アフタや口腔扁平苔癬(原因不明といってもそれぞれに有力な説がある)などがある.これらが原因で口腔粘膜に器質的変化を起こし,口内炎と総称される病態になる.
一方で,そこになんら器質的変化を認めないにもかかわらず,痛みを訴える疾患もある.舌痛症である.舌が「ヒリヒリする」,「燃えるような灼熱感がある」と訴えることが多い.痛みは常に存在するのではなく,仕事中や対話時,摂食時には痛みを自覚しないが,ひとたび気になり出すと痛みが増してくるように感じることも多い.他に,痛みの表現が執拗である,不定愁訴を伴っている,などの特徴もある.
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