連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ
⑤舌痛
沼田 勉
1
,
今野 昭義
1
1千葉大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.1010-1015
発行日 1996年11月20日
Published Date 1996/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901495
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はじめに
全身の健康状態に対応して,舌の表面の性状,色調などには微妙な変化が認められる。また,舌は歯牙を含めた口腔局所の状態や,精神的状態にも多大の影響を受ける。さらに舌の機能である味覚も,全身の疾患,服用している薬剤などによって異常を起こすことが知られている。舌の診察では,視診が大部分を占めるが,明らかな器質的疾患が認められる場合を除けば,舌表面に変化を指摘しえないこともしばしばあり,鑑別診断に苦慮する場合も経験する。
日常臨床の場において,舌の痛みを訴える症例も少なくない。舌痛を訴える患者においても,口腔の視診上明らかな器質的変化を認める場合と,変化を伴わない場合がある。器質的変化がある場合,第一にそれが局所的要因によるものか,あるいは全身疾患の部分症状であるのかを見極める必要がある。さらに,悪性腫瘍である可能性を否定する必要があるであろう。器質的変化を認めない場合には,変化の現れる前段階にある器質的疾患であるか,心身症的疾患としてアプローチすべきものなのかを慎重に鑑別しなければならない。以下に症例を呈示しつつ,舌痛を訴える症例の診断と治療に関して考えてみたい。
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