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はじめに
前回は「咳症状メイン型」として,咳・鼻汁・咽頭痛の3症状に注目し,とくに咳症状(咳・痰など)が主症状であるカテゴリーに関して話をしました.そのなかでも臨床の現場でとても悩ましい問題である,肺炎か気管支炎かの判断の仕方,とくに胸部単純X線写真での判断の理想と現実や,それを飛び越えた臨床のコツを確認しました.さて,今回からは第2部となります.
第1部は「いわゆる“風邪(ウイルス性上気道感染)”を知る」というコンセプトで展開してきました.それに対して,第2部は「“風邪”という主訴に紛れ込む可能性のある“風邪ではない”疾患パターンを知る」,つまり明確に風邪とはいえないカテゴリーに関して考えていこうと思います.
これまでの流れから,風邪の定義が明確になればなるほど風邪とはいえないはずなのに“風邪”という誤診を最も起こしやすいカテゴリーがこの「局所不明瞭・高熱のみ型」でしょう.つまり,熱のみしか症状がない場合では,多くの医師は(患者さん自身も),とりあえず“風邪”と言ってしまいがちです.確かに熱だけしか症状がない場合でも,何らかのウイルス感染の初期の可能性もあります(後述).とくに小児はそうかもしれません.
しかし,「風邪ではなく実は……」というケースとして,最もよくあり,かつ重大なものとして敗血症があげられます.つい「風邪ですね」と言ってしまい,実は腎盂腎炎で,後日,敗血症性ショックで戻ってくるといったことは避けたいですが,意外に起こってしまうケースだと思います.
このようなことになってしまう一番の理由は,とくに初期は「熱の原因が正直はっきりわからない(探せない)」(つまり,よくわからないから風邪と言ってしまう)からであることは間違いないでしょう.診察時に熱源がわからないので,とりあえず「風邪ですね」と言ってしまうのですが,その気持ちはわかる気がします.第1回でも述べましたが,日本は医療アクセス世界最高水準なので病初期に受診しやすく,そのために症状がそろわずはっきりしないことは多々あります.一生懸命に病歴や身体所見をとっても,本当にわからないこともあると思います.しかし,このカテゴリーに隠れている最も重要かつ致死的な病態である「何らかの敗血症の初期かもしれない」ということも多く,きわめて注意が必要なカテゴリーともいえるでしょう.
ではどうしたらよいでしょうか?
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