Editorial
家庭医の生涯教育・再考
藤沼 康樹
1
1医療福祉生協連家庭医療学開発センター
pp.703
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102280
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「糖尿病治療の最近の進歩」「新しい抗凝固療法」「エコーによる◯◯の診断」などといった,地域のプライマリ・ケア医向けの講習会はさまざま行われているが,プロトコールやアルゴリズムの伝達,あるいは知識・技術に関する講義が圧倒的に多い.Sturmbergらによる臨床問題の構造分類1)からみると,生涯教育のコンテンツの現状は,ほぼSimpleな問題に関するものである.ところが,Simpleな問題の組み合わせ=Complicatedな問題になると,こうした生涯教育方略は使えないことがわかる.高血圧症,糖尿病およびその合併症,前立腺肥大,慢性心不全などが併存している場合に,どのような治療戦略を立てるかという講義は,問題自体の個別性が高いことと,問題の組み合わせが無限にあるため,多くの参加者のニーズにあわせることができないからである.
こうした併存疾患の多い事例に関して学ぶよい機会は,教育研修病院における臨床カンファレンスであろう.カンファレンスでは単一の臨床問題のみの患者を取り上げることは比較的少なく,さまざまな領域の専門医がディスカッションしながら事態を解きほぐしていくものが多く,Complicatedな問題についての重要な学びを得ることができる.また,そうした場に参加できずとも,さまざまな領域のエキスパートに直接意見を求める,あるいはsocial network serviceやメーリングリストなどで相談することも,また問題解決にむけた学びを得ることができるだろう.
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