医療トラブルの舞台裏 紛争事例から学ぶ日常診療の心得・1【新連載】
腰椎穿刺は難しい?
長野 展久
1,2
1東京海上日動メディカルサービス
2東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
pp.54-57
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102080
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医療事故がこれほどまでに世間を騒がせるようになったきっかけは,1999(平成11)年に相次いで発生した重大事故,「手術患者の取り違い事件」(横浜市立大学附属病院)と「消毒薬の静脈内誤注射事件」(都立広尾病院)でした.それから約10年,「医療安全」がともかく最優先課題となり,院内のリスクマネジャーがヒヤリハットの報告書をまとめる光景はどこでも普通にみられるようになりました.さらに,帝王切開の事故で逮捕された福島県の産婦人科医師が実は無罪であったという事件では,行き過ぎた責任追及が深刻な「医療崩壊」につながるという新たな問題点も提起され,その結果,医師に対する国民からの厳しい眼も少しは和らいだような印象です.
ところが,訴訟に至らず当事者間で和解する紛争事案は依然として数多く,しかも似たような医療事故がたびたび繰り返されているという残念な状況が続いています.本来であれば,そのような医療事故を積極的に公表して再発防止に取り組むべきですが,医療事故から学ぶ貴重な教訓を適切にフィードバックする仕組みは現時点では存在しません.そこで今号から始まる新連載では,臨床に携わる医師であれば「明日はわが身」ともいえる医療事故・トラブルとその舞台裏について,実例をもとに紹介することにします.
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