病歴と身体診察のポイントと検査の進め方―循環器疾患，とくに起立性低血圧，調節障害を中心に

Case

消化管出血による起立性低血圧によりめまいを生じた1例

患者：60歳，男性．

既往歴：十二指腸潰瘍．

現病歴：2週間から腰痛のため鎮痛薬を服用していた．1週間前から下痢を自覚するようになったが，嘔気，嘔吐，腹痛はなかった．2日前から，起立時のめまいを自覚するようになったため外来を受診した．臥位での収縮期血圧は130/80mmHg，脈拍100/分，立位では80/40mmHg，脈拍120/分と起立性低血圧を認めた．詳細に病歴を聴取すると，1週間前からみられていたのは下痢ではなく黒色便であった．血液検査上，貧血があり，上部消化管内視鏡検査では胃潰瘍からの活動性出血を認めた．内視鏡的止血術と濃厚赤血球輸血を行ったところ，めまいと起立性低血圧は消失した．