Editorial
患者と医療者の共通基盤の形成を中心とする医療
藤沼 康樹
1
1日本生協連医療部会家庭医療学開発センター
pp.1
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101822
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患者中心のケアという言葉は,さまざまな意味で使われる.たとえば,「お客様中心のお店運営」というような意味合いで,患者さんの意見と要求をもっとも重視していくような,消費者主義的な言葉で使われることがある.とくに病院のシステムや姿勢としてスローガン的に用いられていることが日本では多い.まるでホテルのフロントのような受付や,病院内にショッピングモールを作ったりすることが,患者中心の姿勢の典型のように報道される場合もある.
家庭医療の世界では患者中心性はPatient centerednessの日本語訳として広く知られている.患者中心性が家庭医療のキーワードとして最初に提示されたのは,家庭医療の古典的テキストである,Ian McWhinney著「A Textbook of Family Medicine」のなかで,家庭医の臨床的方法論として記述されたことである.これは,患者の健康問題に対して,主訴→医療面接・身体診察・検査→医学的診断という,通常の手順で疾患(Disease)にアプローチするだけでなく,患者の病い体験が患者や家族にとってどのような意味をもつかを探るという「病い」(Illness)へのアプローチを同時並行的に行うというメソッドの提示であった.筆者が,今から17年ほど前にこのメソッドを知った時はかなりの衝撃を受け,自分の診療所の風景が一変したことを,今でもはっきり覚えている.
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