シネマ解題 映画は楽しい考える糧[30]
「ボラット」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.909
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101818
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大人が観るべき偏見と差別の笑い
今回はドキュメンタリーを紹介します.フィクションと異なり,ノン・フィクション作品は観る者に直接問題を提起するので生命・医療倫理的な葛藤や疑問,歴史を学ぶのに最適です.たとえばアラン・レネ監督による「夜と霧」(1955年)はアウシュビッツ強制収容所の真実と悲劇を余すところなく描いた古典です1).自己責任とファストフードの医学的問題を描いたモーガン・スパーロック監督の「スーパーサイズ・ミー」(2004年)も見逃せません2).未見の方はぜひご覧ください.
女性として生まれ,男性として生きて死んだ人物を追ったケイト・デイビス監督の「ロバート・イーズ」(2001年),サン・フランシスコのゴールデンゲート・ブリッジから飛び降りる自殺者,その遺族,自殺未遂者を描いたエリック・スティール監督の「ブリッジ」(2006年),地球温暖化の危機をアル・ゴアが訴えるデイビス・グッゲンハイム監督の「不都合な真実」(2007年)なども必見ではないでしょうか.ご存じマイケル・ムーア監督は,銃社会の恐ろしさを「ボーリング・フォー・コロンバイン」(2002年)で,同時多発テロとその後の米政府の愚行を「華氏911」(2004年)で,そして米国社会の医療制度の問題点を「シッコ」(2007年)で過激に取り上げています.
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