四肢脱力を主訴に救急搬送された28歳男性

Case

患者：28歳，男性．主訴：四肢脱力．

現病歴：3カ月前に四肢脱力で他院へ入院し2～3日で回復した病歴があった．今回の入院3日前より全身倦怠感と下肢の筋肉痛が出現した．前回入院時と同様に，徐々に四肢の筋力低下が進行し，入院前日には支えなしには立位をとるのも困難になった．入院当日，布団から起き上がれなくなったため，救急搬送となった．筋痛も著明であった．上気道炎症状なし．下痢や嘔吐もみられなかった．転倒など外傷のエピソードもなかった．

既往歴：特記なし．内服薬：なし．

家族歴：甲状腺疾患や周期性四肢麻痺などなし．

生活歴：飲酒はしない，喫煙40～60本/日×10年．

社会歴：7年前より飲食業経営．

身体所見：全身状態は落ち着いてみえる．血圧 147/98mmHg，脈拍 90回/分，呼吸数 24回/分，体温 37.6℃，SpO₂ 95％（室内気）．身長 168cm，体重 118kg，BMI 35．結膜に貧血・黄疸なし，頸部では甲状腺腫大なし ，肺音は清，心音は整・心雑音なし，腹部は平坦・軟．

神経学的所見；意識清明，GCS E4V5M6．脳神経所見；異常なし．深部腱反射は図1のように全体的に低下気味・筋トーヌスの低下あり．徒手筋力テスト；右上肢3 左上肢2 右下肢3 左下肢2．感覚；温痛覚異常なし，振動覚も異常なし．

入院時血液検査：

血算；WBC 12,800/μl，Hb 13.9g/dl，Hct 40.1％，Plt 31.8×10⁴/μl．

生化学；Na 142mEq/l，K 2.4mEq/l，Cl 104mEq/l，Mg 1.9mg/dl，Ca 8.2mg/dl，BUN 10mg/dl，Cr 0.6mg/dl，AST 59IU/l，ALT 70IU/l，LDH 211IU/l，T-Bil 1.0mg/dl，CPK 1,698IU/l，血糖 136mg/dl，TSH 3.243μU/ml，f-T4 1.26ng/dl．血漿浸透圧 297mOsm/kg，尿浸透圧 744mOsm/kg．

尿電解質：U-Na 19mEq/l，U-K 14mEq/l．

静脈血ガス分析（室内気，呼吸回数24回/分）：pH 7.43，pO₂ 32.9Torr，PCO₂ 46.9Torr，HCO₃^- 30.6mEq/l．

心電図：図2参照．

胸部X線：明らかな異常を認めない．