Editorial
変わりゆく糖尿病診療に乗り遅れないために
伊藤 澄信
1
1国立病院機構本部医療部
pp.493
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101720
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診療ガイドラインが臨床試験成績に基づいて作成されるようになってから,大きな臨床試験成績が発表されるたびに内容が改定されるようになってきた.空腹時血糖を指標とした糖尿病の診断基準が140mg/dlから126mg/dlになったのは10年前である.今年の米国糖尿病学会で米国糖尿病学会,国際糖尿病連合,欧州糖尿病学会の3団体が従来の診断基準に代えてHbA1c 6.5%を糖尿病の診断基準にすると発表した.わが国の基準も追随するのであろうが,診断基準まで次々と変わっていく医学の進歩に追い付いていかなければならないジェネラリストは大変だ.昨年発表されたADVANCE試験までは目標血糖値は血糖を下げるほどよいという結果だったのが,続いて発表されたACCORD試験やVADT試験の結果では目標を下げると低血糖をきたし,心血管系死亡,全死亡率が高まる可能性があるという結果が示されている.HbA1cを低下させながら低血糖を引き起こさない治療選択が次の目標になりつつある.また,高血圧や脂質異常症などの併存疾患の管理基準も糖尿病の有無で異なり,今もっている知識が最新のものか不安になる.
糖尿病の診断には合併症の評価も欠かせない.評価に必要な検査は血糖,インスリン分泌,尿蛋白(微量アルブミン)に加えて自律神経障害診断のための心電図のRR変動係数(CVRR値),定量的感覚機能検査としてモノフィラメント法などが一般化している.昨年,感染管理上の問題が指摘されたものの,自己管理の有効な手段である血糖測定器も改良がすすんでおり,5秒で測定できるようになった.
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