シネマ解題 映画は楽しい考える糧[14]
「陽のあたる場所から」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.699
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101491
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医師と患者の関係―交流とその距離
出張先で衝動買いしたおかげで出会うことができた1本です.見たことも聞いたこともないタイトル,監督,俳優の映画ですが,DVDケースの「研修医」という文字に惹かれ,「カンヌ国際映画祭正式出品」という謳い文句に背中を押され,半時間逡巡したあげくに5000円札と一緒にレジにもっていきました.その結果は?大成功でした.これを幸運な邂逅とよぶのでしょう.ある研修医と患者の関係をストレートに描いた90分ジャストの作品なので,もし新人医師らの研修会に3時間もらえたならば,前半は映画鑑賞,後半はプロフェッショナリズムを中心に,将来につながる有益な討論ができると思います.
主人公は精神科研修医1年目のコーラ.彼女はある日,フランスのとある病院の精神科病棟でロアという患者に出会います.ロアは自閉的で無言,時に興奮して暴れることもある身元もはっきりしない痩せた中年女性です.診断名は明らかにされませんが,おそらく統合失調症でしょう.コーラはなぜかロアに惹かれ治療を担当することになります.コーラは,ロアの病室で遅くまでトランプをしたり二人で街中に散歩に出たり,さらには自分の祖父の家に連れて行ったりします.自分の誕生パーティーを忘れ,恋人を待ちぼうけさせるほどの入れ込みよう.
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