シネマ解題 映画は楽しい考える糧[69]
「陽のあたる教室」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.258
発行日 2013年3月15日
Published Date 2013/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102788
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教え子たちこそが教育者の「作品」
教育者冥利に尽きる作品です.作曲家を目指していた主人公グレン・ホランドは生活のために高校の音楽教師になります.教育経験も目的意識もありません.彼は初め,いやいや教育に携わっていました.しかし時がたち生徒らのさまざまな可能性に気付き,次第に若者たちに音楽を教えることに大きな意義を見出していきます.気の合う教師仲間もできます.
30年後に彼の教育努力に報いたのは,人員削減による退職勧告でした.真っ先に切られるのが「余分」な音楽だったのです.彼は教師生活中,自作を一度も発表することはありませんでした.しかし盛大なお別れ会を開催するために30年間にわたる卒業生たちが集い,自分たちこそが彼の作品(opus)だったと述べるのです.このシーン,思い出すだけでも感動がこみ上げてきます.とてもいい話ですので,若者たちの教育に関わっている人はぜひご観賞ください.態度の悪い学生たちに吸い取られている気力が,少しは取り戻せるのではないでしょうか.
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