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症例提示
患者:66歳,男性.
既往歴:40歳以降関節リウマチで治療中.
主訴:全身倦怠感,脱力,意識障害.
現病歴:1週間前から感冒様症状を認め,嘔吐を繰り返し,全身倦怠感が著明であったが,自宅でかろうじて日常生活はできていたため,様子観察していた.その後,徐々に体全体に力が入らなくなり,意識レベルも低下してきたため,当院救急部に救急搬送された.
来院時現症:血圧138/96mmHg,心拍数72/分,体温36.9℃,呼吸数22/分.意識レベルはJCS 2~3でやや意識混濁していたが,問いかけに対して応答は可能であった.嘔気,嘔吐を認めたが,胸・腹部身体所見はとくに問題なく,全身の浮腫も認めなかった.対光反射は正常,瞳孔不同なし,その他神経学的所見に異常は認めなかった.項部硬直も認めなかった.
来院時血液検査所見(表1):Na 127mEq/l,K 3.5mEq/l,Cl 90mEq/l,CK 290IU/l,BUN 27.7mg/dl,Cr 0.60mg/dl,WBC 15,400/μl,CRP 1.16mg/dlであった.低Na血症と炎症所見を認めた.
来院時胸部X線検査:異常は認めなかった.
来院時頭部CT検査(図1):明らかな異常所見を認めないと判断した.
入院後経過:入院当初は,感冒からの腸炎による繰り返す嘔吐による脱水と,低Na血症からの意識障害と診断し,脱水と低Na血症を補正するための輸液を開始した.初期輸液は乳酸リンゲル液を150ml/時間で投与した.治療開始24時間後には血清Na値は119mEq/lと悪化したが,意識レベルは不変であった.治療開始24時間後の時点でのCVPは5cmH2O,尿量は540ml/日であり,脱水が示唆された.その後も同様の輸液治療を続けたが血清Na値は第3病日に117mEq/lまで低下した.意識レベルはJCS 3で変化なく,頭痛も訴えず,神経学的所見もとくに異常を認めなかったため,Na補充と乳酸リンゲルによる輸液で経過観察していた.意識レベルは入院6カ月前から痴呆症状が出現しており,搬入直後から第3病日まで通常とさほど変化がないと家人の話から判断した.
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