特集 片頭痛だけが頭痛じゃない
【頭痛の部位と性状,随伴症状から考える】
⑦頭痛の性状から考える
柴田 護
1
1国立病院機構東京医療センター神経内科
キーワード:
くも膜下出血
,
雷鳴頭痛
,
動脈解離
,
群発頭痛
,
三叉神経
Keyword:
くも膜下出血
,
雷鳴頭痛
,
動脈解離
,
群発頭痛
,
三叉神経
pp.496-500
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101142
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Case
当初前兆のある片頭痛と思われた脳血管攣縮を呈した24歳女性
右眼の視覚障害・左半身の感覚障害・頭痛を認め,近医で片頭痛と診断されスマトリプタンが処方された.視覚異常と非拍動性頭痛が再度生じたため同薬を服用したところ,左片麻痺が出現した.当時筆者が勤務していた施設に入院となり,頭部MRAなどで血管攣縮が明らかになり,塩酸ファスジル投与で軽快した.血管収縮作用を有するスマトリプタンは中止された.
その後も頭痛発作(時に拍動性)が何回かあったが,約10カ月後にとくに誘因なく同様の頭痛と左片麻痺が出現した.図1はその時の血管造影である.内頸動脈に限局した血管攣縮による狭窄が認められた(→).本例は一見前兆のある片頭痛と思われたが,このような症例にトリプタンを用いると非常に危険である.頭痛の機序は不明であるが,内頸動脈に分布した三叉神経の刺激によるものと推測される.
頭痛疾患の診断において問診から得られる情報はきわめて重要であり,頭痛の性状を把握することが診断の第一歩であるといっても過言ではない.また,拍動性だから片頭痛などと短絡的に考えたり,診断にバイアスがかかってしまったりというピットフォールもあり,性状に加えてさらにどのような情報を得て正確な診断に至るかをよく学ぶ必要がある.本稿では,その点について解説を行い,さらに日常臨床で時に遭遇するわりには一般に認知されていない三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias : TAC)について概説したい.なお,本稿では片頭痛以外の頭痛疾患の解説に力点が置かれていることを了承されたい.
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