患者の論理・医者の論理12
アウトカムと人生の折り合い
松村 真司
1
1松村医院
pp.260-263
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101126
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Case
田中ハルさん(95歳,仮名)は数年前からやや痴呆ぎみではあったものの,自宅で独身の次男との二人暮らしを続けていた.年齢のわりには元気で,自宅の周囲ならば散歩もできるくらいのADLは保たれていた.
ある日の深夜,トイレに立とうとして意識消失.物音で目を覚ました次男が気づき,救急車を要請.救急隊到着時には意識を回復していたが,そのまま近くの病院へ搬送された.入院時の検査では小球性貧血が認められ,その後の精査で上行結腸癌が疑われた.輸血と鉄剤投与により自覚症状はなくなり,食欲も良好になった.
本人は「もう年だから,何があっても覚悟はできている.具合がよくなったので何もせず家へ帰る」と言っている.同居の次男は「これまでずっと元気だったし,打つ手があるのならば是非お願いします」と,見舞いに来た長男は「先生にすべておまかせします」と話していた.担当の外科医は「現在のADLならば,手術できないこともない.通過障害の症状が出る前に手術しましょう」と説明.しかし,それを聞いた内科医のあなたは,「無理せず,家へ帰ったほうがいいのでは?」と考えた.
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