特集 高齢者のQOLを高める
高齢者の孤独・悲嘆・うつへのアプローチ
益子 雅笛
1
Miyabi Masuko
1
1有限会社エム・エイチ・ビー
キーワード:
身体疾患の鑑別
,
環境因子
,
初老期(退行期)うつ病
,
激越うつ病
,
精神科受診
Keyword:
身体疾患の鑑別
,
環境因子
,
初老期(退行期)うつ病
,
激越うつ病
,
精神科受診
pp.1032-1036
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101081
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Case
身体的愁訴の後,痴呆様症状が出現した高齢者のうつ病の1例
患者:68歳,女性.
家族背景:2年前に脳梗塞を発症し右半身麻痺と失語症がある夫と同居中.
既往歴:特記事項なし.
現病歴:1年前より便秘傾向になったが,食事量が減ったからだろうと自己判断をして放置,その後便秘傾向が悪化し,不眠も続くようになったため,近医内科を受診.血液検査や消化管精査上は異常を認めず,下剤と睡眠導入薬(トリアゾラム)の服用を続けていたが,改善はみられず.半年ほど前より軽度の物忘れを自覚するも,本人や家族,医師ともに「夫の介護疲れが原因」と考えていた.しかし,1カ月前,仕事の都合で長女家族と別居することが決定した頃から,同じことを何度も話したり,家族との会話がかみ合わないことが増えたため,心配した長女の勧めで,夫が通院中の神経内科を受診.長谷川式簡易知能評価スケールは16/30点と痴呆が疑われるも,頭部MRI検査ではアルツハイマー型痴呆の所見はみられず,うつ状態を疑われ,紹介にて精神科を受診.上記症状のほか,家族からの情報で動作緩慢などの症状がみられることや,「預金通帳や実印を懐に入れていつも持ち歩くようになっている」ことがわかった.うつ病を疑い,抗うつ薬(パロキセチン)を開始,漸増したところ,約1カ月後には食欲低下や意欲低下などの症状は改善傾向がみられ,表情もやや明るくなった.しかし,失見当識は継続してみられている.
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