Editorial
真の総合性が求められる高齢者医療と老年医学
藤沼 康樹
1
1東京ほくと医療生協 北部東京家庭医療学センター/生協浮間診療所
pp.997
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101072
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「高齢者においては疾患の典型例を示さない場合がある」というフレーズは,われわれが学生時代からよく耳にする注意書きである.肺炎なのに熱が出にくいとか,老人のうつ病は典型的でない,などといわれたりする.高齢者の立場に立っていえば,それが「典型」なのである.老年医学は決して非定型的な内科学ではない.それが,今回の特集で読者に伝えたいメッセージである.
高齢者はさまざまな問題点を複合的に抱えている.たとえば,ある82歳の女性は,軽度の認知障害があり,不眠がある.白内障で細かな文字が読みにくく,難聴だが補聴器が合わないので会話がスムーズでない.骨粗鬆症と脊椎の変形があり,腰痛と膝関節痛がある.以前より糖尿病,高血圧症,心不全で投薬を受けている.便秘がひどく下剤を常用している.足の爪の変形があって歩く時に支障があり,冬になると体のあちこちがかゆくなる.自治体の健診では,貧血が指摘されており,消化管の精査をすすめられている.エレベーターのない団地の4階に住んでいるが,最近,階段の昇り降りが大変になっており,外に出ることが少なくなった.しかし,介護認定では要支援レベルとされ,介護保険サービスが十分利用できない.夫は昨年まで元気だったが,今は前立腺癌が進行し,入退院を繰り返している.
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