特集 せん妄・妄想・幻覚へのアプローチ
せん妄の原因と診断のコツ―類縁症状との鑑別を含めて
一瀬 邦弘
1
Kunihiro Isse
1
1東京都立豊島病院
キーワード:
せん妄
,
直接原因
,
誘発因子
,
準備因子
,
急性錯乱状態
Keyword:
せん妄
,
直接原因
,
誘発因子
,
準備因子
,
急性錯乱状態
pp.838-842
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101035
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Case
大腿骨頸部骨折をきっかけに(アルコール離脱?)せん妄を起こした主婦
患者:49歳の主婦.
飲酒歴:19歳頃から飲酒しているが,今までに問題行動,朝からの常習飲酒,離脱症状などはない.最近は「週に2~3日,ビール2~3本」程度.
現病歴:X日,飲酒後にしりもちをつき転倒.整形外科病院に搬送され,右大腿骨頸部骨折のため入院.手術待ちのX+3日目,夕方から幻視が出現.不穏状態となり,看護師の制止が守れず,ベッドから降りて歩行しようとし,夜間不眠で病棟中大騒ぎ.一般病棟での管理が困難なため,X+4日,当院精神科へ救急搬送.
右下肢を牽引中,日時・場所は正答するが,話は迂遠でまとまりに欠け,最軽度の意識混濁を示す.さらに「エアコンの吹き出し口に赤ちゃんがいる」「そこで人の手がひらひらと動いている」などの幻視がある.「同室の83歳のお祖母ちゃんをみんながいじめている」と妄想的に語る.手指振戦,発汗を認め,アルコール離脱せん妄で入院加療を要する.しかし本人には病気という自覚がなく,入院治療の必要性の理解に欠ける.やむなく長女の同意による医療保護入院とした.後になって,吃音を苦にジアゼパム5mgを15年以上にわたって連用していたことが判明.アルコールとベンゾジアゼピン系薬物との相互作用によって,酒量が少ないにもかかわらず離脱反応が出現していた.
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