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医師主導型の治験が始まった.EBMの根拠とされる臨床試験成績がわが国で得られていないことを残念に思っている方も多いだろう.基礎系の医学研究は研究費の額も世界に誇れるものになったし,『Nature』をはじめとしたインパクトファクターの高い雑誌にわが国発の論文が載るようになった.しかし,『New England Journal of Medicine』をはじめとする臨床系の雑誌には,残念ながら日本人のデータが収録されることはほとんどない.糖尿病の罹患者は740万になり,疾病構造は欧米型になってきているが,虚血性心疾患の発症率などはまだ低く,欧米の臨床試験成績がそのまま外挿できるとは限らない.一方では個人情報保護法が来年4月から施行され,究極の個人情報である疾病に関する情報の管理,倫理面の配慮など,臨床研究を行うためのハードルは一層高くなっていく.根拠に基づく医療を行うことは一般化したが,その根拠作りはこれからの課題である.臨床研究は基礎研究と違って多くの臨床家の協力なしには進まない.臨床研究に協力した人に対して正当な評価をしなければ,わが国の臨床研究は進歩しない.臨床研究を支えているのは,論文に名前の載る高名な先生方ばかりではなく,優れた臨床家たちである.
外科医は技術が伴わなければ,外科医たりえない.大学の教員選考に際して,手術例数が評価されるようになってきた.基礎医学の教員はインパクトファクターとか科学研究費の獲得額でよいかもしれない.しかし,内科医の評価はどうすればよいのだろうか.診療している患者数かもしれないが,治験を含む臨床研究に多くの患者さんを参加していただくことも評価指標になるのではないかと思う.臨床研究や治験に尽力する,優れた内科系臨床家が評価されなければ,わが国の臨床医学は進歩しない.
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