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生体の光透視と光CT
清水 孝一
1,2,3,4
1北海道大学大学院工学研究科
2システム情報工学専攻
3生体シスナム工学講座
4医用システム工学分野
キーワード:
近赤外光
,
医用画像
,
CT
Keyword:
近赤外光
,
医用画像
,
CT
pp.1440-1443
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902778
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1.はじめに
これまで"光は生体を透過しない"と考えられ,光を用いてX線のような透視を行うことは不可能とされてきた.しかし近年の光学技術の進歩は,この常識を覆しつつある.生体組織の吸光スペクトルを見ると,生体色素や水による吸収のため,光の透過率は一般に低い.しかしその中で,波長700~1,200nmの近赤外領域は,部分的に吸光度の低い"分光領域の窓"となっている.つまりこの波長域の光は,生体組織をよく透過する1,2.またこの波長域では,ヘモグロビンがその酸素化状態に応じて特有の吸光スペクトル変化を呈する.したがって透視像が得られれば,体内の生理的変化を体外から無侵襲的にイメージングできるという重要な可能性が期待できる3).
しかし,透過率が高いだけでは体内構造を可視化することはできない.光の場合,X線や磁気と異なり,生体組織における散乱という困難な問題が存在するからである.すなわち,吸光度の低い波長域を選ぶことにより透過光が得られるが,強い拡散性の散乱のため生体内の構造物を見ることはできない4,5).
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