EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第8回・生薬編]
麦門冬と咳
宮田 健
1
,
磯濱 洋一郎
1
Takeshi Miyata
1
,
Youichirou Isohama
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部薬物活性学分野
pp.708-711
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101007
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麦門冬は『神農本草経』の上品に収載され,古来から滋養,去疲,鎮咳薬として用いられ,とくに肺熱を治する効果が多いとされている.ジャノヒゲ,またはそのほかの同属種物の根の膨大部である.ステロイドサポニンとしてルスコゲニン配糖体のオフィオポゴニンA,B,C,Dとディオスゲニン配糖体のオフィオポゴニンBユ,Cユ,Dユを含有する.また,ホモイソフラボノイド誘導体としてメチルオフィオポゴノンなどが存在する.そのほかにボルネオール誘導体,シトステロール,フルクトース,スクロースなどの糖類を含有する.
麦門冬単独の薬理作用は不明の点が多いが,水製エキスが経口投与で正常およびアロキサン糖尿ウサギの血糖を持続的に下降すること,メタノールエキスはラット腹腔内投与でカラゲニン足蹠浮腫を有意に抑制することが報告されている.また,主成分のオフィオポゴニンについては,IgM抗体産生抑制作用,白色ブドウ球菌・大腸菌・チフス菌に対する抗菌作用が認められている.咳との関連ではオフィオポゴニンB,およびCとDの混合物(粗抽出物)に,各種メディエーターにより誘発した咳を末梢性に抑制する作用が見出されている.
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