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トラベルメディスン,トラベルクリニックという用語の正しい内容が「海外渡航者の健康を考える会」を中心にようやく日本でも理解されるようになってきたが,プライマリ・ケア医や一般人にはまだまだ馴染みの薄い言葉である.予防接種,健康診断,環境問題,渡航中のトラブル,慢性疾患の継続治療,帰国後の注意などを含め,渡航者に関する幅広い分野を取り扱うのがトラベルメディスンで,実践の場がトラベルクリニックである.欧米ではトラベルメディスン専門医制度があり,「安全な旅」を求めてトラベルクリニックへの相談が増加している.わが国の海外渡航者数も年間1,650万人(2002年,法務省資料)にも及び,誰でも海外渡航できる時代となり,プライマリ・ケア医の海外渡航に関する業務も必然的に増加せざるを得ない.渡航先での疾病,事故も少なからず報告されているが,正しく情報を入手していれば未然に防げたものも多い.その意味で,わが国におけるトラベルメディスン,トラベルクリニックの発展が寄与するものは大きいと考える.
渡航期間にかかわらず,日本とは気候,風土,文化,食生活,慣習,言葉などが異なる環境下で安全に過ごし,有益な経験を得,かつビジネスを成功させるなどの目的達成には,何よりも海外渡航者本人の心身が充実していなければならない.渡航前に,それ相応の準備と情報入手が必要で,とくにSARS(重症急性呼吸器症候群)や高病原性鳥インフルエンザなどのアウトブレイク,さらに近い将来の新型インフルエンザの発生も予想されており,そのような感染症の予防法や伝播地域について,インターネットなどを通して,渡航者本人とともにプライマリ・ケア医も詳しく知っておく必要がある.
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