特集 医師と法律 トラブル防止の心得と対策
医療訴訟の流れと医師の役割
松井 菜採
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1すずかけ法律事務所
キーワード:
医療訴訟
,
鑑定人
,
専門委員
,
協力医
Keyword:
医療訴訟
,
鑑定人
,
専門委員
,
協力医
pp.400-403
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100936
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医療訴訟には「刑事」と「民事」があり,両者は全く別個の手続である.医事訴訟のほとんどは民事であり,刑事裁判になるのは,最近でも年平均15件(うち7割が略式手続)であり1),ごく一部である.本稿では,民事の医療訴訟(J1)について説明する.
日本の医療訴訟の現状
最高裁判所事務総局の司法統計2~4)によると,医療訴訟の提訴件数は近年増加傾向にあり,2003(平成15)年に初めて1,000件を超え,2004年1,110件,2005年999件であり,ここ数年は1,000件前後で推移している(図1の新受件数).
医療訴訟(第1審)の審理期間は,1995~1996年には37~38カ月程度であった.しかし,近年,医療集中部の設置,医学界の協力を得た訴訟運営の改善などの努力がなされた結果,2004年度には27.3カ月まで短縮している.もっとも,通常の民事事件は8~9カ月であるので,長期間を要することは事実である.
医療訴訟では,和解で終了する事件が4割,判決に至る事件が6割程度である.判決の認容率(患者側勝訴率,一部勝訴を含む)は,4割前後である(図1).通常の民事事件(うち人証調べ実施)が7割程度であることと比較すると,現在でも,医療訴訟は,患者側にとって困難な訴訟であるといえよう.
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