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私が開業するにあたってモットーとしたことは,プライマリ・ケアの5つの要素として有名な,①accessibility(近接性),②comprehensiveness(包括性),③coordination(協調性),④continuity(継続性),⑤accountability(責任性)でした.このコンセプトは,「いつでも,幅広い日常的な病気を中心に,さまざまな医療資源を活用して,質の高い医療を,責任を持って継続的に提供する」というものです.開業当日0冊だったカルテが徐々に増えるなか,クリニックに対する患者さんの期待を肌で感じる幸せを実感しています.これも,上記のコンセプトが地域住民に受け入れられてきたからではないかと自負しています.外来医療では,病気の兆しを見つけ早期に診断する難しさとやりがいを感じ,在宅医療では,人生最期の場面で患者さんから人間的大きさと深みを教えられることも度々です.私は,この地域医療の楽しさや生きがいを医学生や研修医に伝え共有できたらと考えて,彼らを受け入れてきました.
一方で,開業医には悩みも尽きません.私がそのなかでも最も恐れるのは,1人で開業している場合,自分の診療が密室化していまい,「蛸壺」に陥ってしまうことです.この危険な状況に陥らないためにも,診療内容をUp To Dateするための学習や,他医に紹介した患者の注意深い経過観察などと同時に,診療の場面に複数の医師(あるいは医学生)の目を入れ臨床現場を開放させることが有用だと考えます.来年度から始まる診療所での臨床研修では,地域医療の現場を経験するとともに,その新鮮な知性と感性で,私のクリニックをおおいに刺激してくださることを期待しています.
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