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当院もついに電子カルテを導入した.導入前には,さまざまな機種のデモを見た.価格,入力の簡便さ,診療支援機能などのほか,昨今の個人情報保護に関する機運の高まりから,セキュリティーを売りにしたものも多かった.当院のような極小の町医者ですら厳しい管理を求められる時代である.複数のスタッフが関わる施設では,より厳格なセキュリティーの確保が必須なのだろう.個人の認証はパスワードで行うものが主流だが,指紋による認証を行うものもあった.確かに最近では銀行のATMなどでも,指紋や手のひらの静脈パターンという生物学的情報を用いた認証,生体認証が増えてきている.そのうちすべてのATM端末で生体認証を求められるようになるのだろうか.そうなると面倒になった強盗にカードを手首ごと切り落とされて持っていかれるような恐ろしい犯罪も起きるようになるのだろうか.まるでアラビアンナイトである.
今回の特集は顔である.結局のところ人間が他人を識別しているのは顔なのだそうだ.確かに,逃亡犯は身長170~175cm,30代の男性,紺の上着とジーンズに白のスニーカー,という身体的特徴や服装の提示よりも,顔写真や似顔絵があれば一発である.顔は個体と個体とを識別させるという意味で,記号的に特別な身体なのだろう.また当院の患者にも双子が何組かいるのだが,私がみても違いがわからないほどそっくりな一卵性双生児でも,親や兄弟はわずかな違いで簡単に識別できている.それほど,顔というのは個体識別の意味のうえでも,微細な変化が大きな影響を与える重要な部分なのだろう.だからこそ顔を構成する目,耳,鼻,皮膚など個々の器官の疾患とは別に,集合体としての顔に表出される体や心の疾患があるのだろう.本号の論文を読み,改めて勉強したい.
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