在宅医療技術の進歩13
在宅医療における肺炎への対応
川畑 雅照
1
1虎の門病院呼吸器科
pp.82-85
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100781
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肺炎は日本人の死因の第4位で,その90%以上が65歳以上の高齢者である.要介護老人の直接死因の30~40%が肺炎といわれており,高齢者にとって肺炎は生命予後に影響する大きな脅威となる.高齢者の肺炎には表1のような特徴があり1),若年者の肺炎とは区別してマネジメントしなければならない.本稿では,高齢者肺炎の発症のメカニズムから診断,治療,予防について,在宅という場の特性をふまえ解説したい.
高齢者の肺炎のメカニズム
高齢者肺炎の発症には,全身的要因と局所的要因(表2)が複雑に影響しており2),薬物治療や経鼻経管栄養が関与することもある.在宅高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎だが,食事中にむせるような顕性誤嚥だけではなく,患者自身も自覚していない不顕性誤嚥によるものが圧倒的に多いことが知られている.このため,明らかな誤嚥のエピソードがなくとも誤嚥の関与は否定できない.不顕性誤嚥とは,無意識に口腔内分泌物を少量ずつ反復して気道内へ吸引することで,嚥下反射と咳反射の低下が原因となる.嚥下反射の低下により口腔内の雑菌を含む唾液を無意識に気道内に吸入し,咳反射が低下するため気道内に入った唾液を咳で除去できなくなる.
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