在宅医療技術の進歩(第12回)
在宅医療におけるワクチン接種
川畑 雅照
1
1虎の門病院呼吸器科
pp.1064-1067
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100763
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ワクチンとは
ワクチンの歴史は,1928年のペニシリンの発見から遡ることさらに100年以上前の1796年,ジェンナーが種痘法を発明したことに始まる.その後開発が進み,現在では病原体を弱毒化させた生ワクチンと,病原体の免疫原性を保持した状態でホルマリンなどの薬剤処理により毒素活性を消失させた不活化ワクチンの2つが用いられている(表1).
ワクチン接種の目的は,その病原体への感染を免れるための免疫力を獲得することである.そもそも免疫には,Tリンパ球などによる細胞性免疫と抗体による液性免疫とがある.生ワクチンは主にTリンパ球による細胞性免疫を不活化し,1回投与により永続的な免疫の獲得が可能である.風疹,麻疹,天然痘,ポリオ,結核(BCG)などで生ワククチンが実用化されている.一方,不活化ワクチンは主にBリンパ球による抗体産生により効果を発揮するため,持続は一時的で数回の接種が必要となる.インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどが,現在広く用いられている不活化ワクチンである.寝たきりの高齢者では,細胞性免疫が低下し,肺炎に罹患しやすいものの,液性免疫は低下していないため,不活化ワクチンの効果は一般成人のそれと同等といわれる.
本稿では,広く在宅高齢者に適応となるインフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンについて解説するとともに,結核ワクチンの使用の是非についても簡単に述べたい.
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