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はじめに
2011年,高齢化社会が進行するなかで肺炎が死因の第3位になったことが報告された1).高齢者では誤嚥性肺炎による死亡頻度が高く,原因菌としては口腔内に存在する病原体が重要となる.そのなかでも肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は最も重要であり,残念ながら最も死亡率の高い原因菌と考えておかなければならない.肺炎球菌は肺炎・中耳炎・副鼻腔炎などの呼吸器感染症の原因としてだけでなく,腹膜炎,敗血症,髄膜炎などの全身感染症の原因としても重要である.近年,肺炎球菌においてもペニシリン,フルオロキノロン,マクロライド,ミノサイクリンなどの抗菌薬に対する耐性菌が出現し問題となっている.本菌の病原因子として菌体を覆う莢膜多糖体が重要であり,その抗原性は90種以上に分類されている.1988年から23種類の莢膜多糖体を抗原とする23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(pneumococcalpolysaccharidevaccine23;PPSV23,ニューモバックス®NP)が応用され,2014年には65歳以上の高齢者を対象に定期接種がスタートした.さらに同年,13種類の莢膜多糖体にタンパクを結合させ免疫原性を高めた13価肺炎球菌蛋白結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine 13;PCV13,プレベナー13®)の任意接種も可能となっている.高齢者の肺炎,特に死亡率の高い肺炎球菌性肺炎をどのように予防するかは大変重要な問題であり,この点でいかにワクチンの接種率を高めていくか,どのように賢くワクチンを利用していくかがクローズアップされている.本稿では,高齢者の肺炎,特に肺炎球菌性肺炎に焦点を当てながら,その疫学,細菌学的特徴,ワクチンの問題について概説する.
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