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ギアチェンジ―緩和医療を学ぶ・1
緩和医療初診時の包括的評価
Whole Patient Assessment
木澤 義之
1
1筑波大学臨床医学系
pp.56-61
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100775
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Case
患者:Sさん(仮名),58歳,男性,肺癌.
2002年9月,職場の検診で胸部異常陰影を指摘され,総合病院内科を受診.右肺上葉に4 cm大の肺癌(高分化腺癌),第12胸椎への転移,肝転移を認めた.Stage Ⅳであった.手術適応なく,化学療法(CDDP+CPT-11)を施行するも奏効せず.腎機能悪化もみられ,これ以上の化学療法の継続は不可能と判断され,同12月緩和ケア外来に紹介になった.第12胸椎への骨転移は,緩和ケア外来に初診する1カ月前に放射線治療(30Gy, 10Fr)が終了していた.患者さんの症状は背部痛で安静時の鈍い痛みがあり,動作時はとくにひどくなった.寝返りをうっても強い痛み(NRSで8)がみられるため,夜間不眠となっていた.身体所見では第12胸椎に一致して叩打痛がみられる他は異常がみられなかった.気分の落ち込みがあるものの,病的なものとは診断されなかった.PSは1で,ADLはほぼ自立.病状理解は非常に良好で,予後も理知的に理解していた.今後は,できるかぎり外来通院を続け,自宅で療養したいとの希望であった.
疼痛に対する治療が開始されていなかったため,ナイキサン(R)6T 分2とサイトテック(R)が処方された.2週後再来時,患者の疼痛はほぼ消失し(NRS 0~1),笑顔がみられた.
症状コントロールは良好で順調に経過したが,2カ月たったある日の外来,Sさんが深刻な顔をして,「先生,少し話があるんだけど」といって相談をもちかけてきた.
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