JIM Lecture
H5N1型鳥インフルエンザからの新型インフルエンザに備える
岡田 晴恵
1
1国立感染症研究所ウイルス3部
pp.578-581
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100380
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現在,世界中の広い地域でH5N1型高病原性(強毒型)鳥インフルエンザが蔓延している.この鳥インフルエンザに由来して,「新型インフルエンザ」が出現することが強く想定され,国連,世界保健機構(WHO)をはじめ,先進諸国で新型インフルエンザ対策が緊急に進められている.では,現段階で想定される新型インフルエンザとはどのようなものなのだろうか.H5以外の鳥インフルエンザからの新型インフルエンザ発生も可能性もあるが,現在,H5N1型鳥インフルエンザが流行拡大しヒトへの感染事例が増え続けている現状から,とくにこのウイルスに由来する新型インフルエンザを中心に本稿を進める.
高病原性鳥インフルエンザの高病原性(強毒型)の意味とは 低病原性(弱毒型)鳥インフルエンザウイルスの感染は,呼吸器と消化器に限局しており,感染した鶏はほとんど無症状に留まる.これに対し,強毒型ウイルスは血流に乗って全身へ広がり,さまざまな臓器に感染して,1~2日間で鶏を100%死に至らしめる.インフルエンザウイルスの表面には,HA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミダーゼ)がスパイク状に並んでいる.HAはウイルスの宿主細胞のレセプターへの吸着侵入に働く.この際HAは,宿主のプロテアーゼ蛋白分解酵素で2つに切れることが必要で(HA開裂活性化),このように開裂することによって細胞への感染性を獲得する(図1).HAが開裂しなければ宿主への感染はできないため,ウイルスのHAを開裂させるプロテアーゼの局在でウイルスが宿主のどの臓器で多段階増殖できるのかが決まる.
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