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◆痴呆患者で嘔吐,発熱をみた時に,すぐに誤嚥性肺炎とするのではなく,やはりその嘔吐の原因も考える癖をつけていきたい!
Case
患者:87歳,男性.
主訴:発熱,嘔吐および呼吸苦.
既往歴:①脳血管性痴呆,②胆囊摘出術後(14年前),③右鼠径ヘルニア,④嚥下困難による胃瘻造設術(1年前).
投薬内容:塩酸チアプリド50 mg分1,塩酸ビペリデン5 mg分1,ラクトミン製剤3 g分3,塩酸タムスロシン0.2 mg分1,エリスロマイシンドライシロップ200 mg分2.
現病歴:患者は4年前から脳血管性痴呆の診断にて近医入院中であった.さらに2年前より水分の嚥下難がみられたため,胃瘻造設が行われ同部位から経管栄養が行われていた.今回,突然の嘔吐と軽い腹痛が出現したため,禁食にて経過観察していた.しかし,夜間に再び胆汁様嘔吐が出現し,さらに発熱と呼吸苦も出現した.酸素飽和度も室内気で80%と低下したため,誤嚥性肺炎の診断にて当院救急室へ紹介搬送となった.
入院時現症:血圧140/70 mmHg,心拍数64回/分,呼吸数20回/分,体温38℃.結膜に貧血や黄染を認めず,口腔はう歯なし,頸部リンパ節触知せず,頸部硬直なし,肺音は右下肺で湿性ラ音を聴取,心音は整・雑音なし,腹部は軽度膨隆がみられ,びまん性に圧痛あり,腸蠕動音は軽度亢進,鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの所見なし,直腸診にて圧痛なく便塊や腫瘤を触れず,四肢には特記なし,皮膚所見も特記なし.
入院時検査所見:血算;WBC 9,100/μl,RBC 356×104/μl,Hb 11.6 g/dl,Hct 34.3%,Plt 17.5×104/μl.生化学;Na 132 mEq/l,K 4.2 mEq/l,Cl 93 mEq/l,Ca 8.8 mg/dl,Mg 2.1 mg/dl,AST 20 IU/l,ALT 16 IU/l,s-Amy 80 IU/l,LDH 186 IU/l,CPK 50 IU/l,Glc 86 mg/dl.便潜血;陰性.
胸部単純X線写真:図1.
腹部単純X線写真(臥位および左側臥位):図2.
心電図:正常範囲内.
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