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Case
患者:78歳,男性.
主訴:失神.
既往歴:慢性腎炎にて当院の腎臓内科に通院中.
現病歴:8月21日,右足関節の発赤,腫脹,疼痛を自覚し,近くの診療所を受診.痛風発作と診断され,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の内服薬と坐薬を処方された.8月28日朝,本人がトイレへ行ってしばらくしてドスンという音がしたため家人が駆けつけると,本人が便器の前で大便をしたまま倒れていた.当初,呼びかけに応じなかったが,数十秒後に意識は回復.その後,救急車で当院の救急外来を受診した.
来院後,ベッド上で診察を行ったが,意識は清明で,血圧138/62 mmHg,脈拍78/分・整,呼吸数12回/分,体温36.3℃で自覚症状は認められなかった.眼球結膜はやや貧血様であったが,もともと腎臓内科で貧血といわれているとのこと.右足関節の発赤・腫脹・疼痛を除いて,その他,特記すべき身体所見を認めなかったが,経過観察目的の入院を勧め,了承を得た.
入院時の検査として,心電図(異常なし),採血,静脈確保の後,胸部X線を撮るため臥位から座位となったところ,眼球が上転して痙攣と意識障害が出現.直ちにストレッチャーへ移動し,臥位としたところ意識は直ちに回復し,血圧142/78 mmHg,脈拍92/分で,再検した心電図も正常であった.間もなく緊急検査室よりHb 7.6 g/dlの連絡があり,腎臓内科での20日前(8月8日)のHb 11.5 g/dlより貧血が著明に進行しており,急性の失血による貧血・循環血液量減少に伴う失神を疑った.直腸診にてタール便を認めなかったが,胃洗浄を施行したところ,新鮮血を多量に認め,上部消化管出血による貧血・循環血液量減少と診断した.活動性の出血であり,直ちに消化器内科へコンサルトして,緊急内視鏡を施行.胃体上部大彎に多発する不整形の潰瘍性病変(A1ステージ)を認め,クリッピング,エタノール注入にて止血したが,貧血はHb 6.0 g/dlまで進行し,輸血も行った.H. pylori菌は陰性で,NSAID潰瘍と考えられた.
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