増刊号特集 泌尿器科外来診療—私はこうしている
Ⅵ.診断・治療のための必須知識
泌尿器科的主訴をもった心身症の診かた・とらえかた
斉藤 雅人
1
Masahito Saitoh
1
1明治鍼灸大学泌尿器科
pp.278-281
発行日 2000年3月30日
Published Date 2000/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902940
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1 はじめに
泌尿器科学は具体性が極めて高い学問である。つまり,現代の優秀な診断機器を駆使すれば,ほとんどの疾患は診断可能である。しかし,心身症となるとその診断は難しい。そして,少ないながら心身症と思われる病態は泌尿器科領域においても存在するのは事実である。まず,心身症とは何かであるが,日本心身医学会の定義(1991年)によれば,「身体症状のなかで,その発症や経過に心理的社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし,神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状は除外する」とある1)。
泌尿器科領域において,心理的社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態としては,何が挙げられるかというと,これも難しいところであるが,神経性頻尿および心因性勃起不全が代表的な疾患であり,その一部に,心身症の可能性のある病態として尿失禁,夜尿症,前立腺症などが挙げられている。勃起不全では,勃起機能が正常であれば比較的心因性の勃起不全であることの診断はつけやすく,また原因となる心理的社会的因子も見つけやすい。これは泌尿器科領域における心身症の代表的なものであろう。しかし本特集においては,この勃起不全について特にその分野の大家が2人も執筆され,心因性の勃起不全についても必ず言及されると思われるので,本稿では省略させていただく。
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