増刊号特集 泌尿器科外来診療—私はこうしている
Ⅹ.メディカルエッセイ
移植外来一案ずるより産むが易し
星長 清隆
1
1藤田保健衛生大学医学部泌尿器科
pp.126
発行日 2000年3月30日
Published Date 2000/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902904
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私どもの施設では,ほとんど泌尿器科医のみで腎移植を行っている。多くが献腎移植であり,また,当施設では腎内科が透析室を担当し,シャントの手術も彼らが行っているため,泌尿器科の主治医が患者さんと初めて顔を合わせるのは移植の数時間前ということも稀ではない。この限られた時間内に,患者さんの病態を把握し,互いの信頼関係を築くことはかなり難しいと考えられている。しかし,愛知県では透析医が腎移植に協力的であるという歴史もあり,実際やってみると意外に問題もなく,各施設で献腎移植が盛んに行われているようである。もちろん例外もないではないが……。
患者Aさんは58歳,男性。7年前から透析を受けているが自己管理が不良で,時々心不全を起こす透析医泣かせの患者さんであった。登録後初めてAさんにHLA適合度のよい献腎ドナーが現れ,当院で腎移植を受けるために喜んで来院された。しかし,タクシーを降りて病院玄関から外来まで歩いただけで息切れがするようで,このごろは50m歩くのがやっととのことであった。驚いて透析施設の主治医に電話で問い合わせたところ,シャントの状態も悪く,Aさんを透析で維持することが大変なので,何とか移植してやってほしいとのことであった。難しいとは思いながら,循環器内科にお願いし心エコーによる評価を行ってもらったが,やはりAさんには心不全があり全身麻酔は危険を伴うと判断されたため,患者さんには申し訳なかったがお引き取りいただいた。
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