手術手技 基本手技・6
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馬場 志郎
1
,
平尾 佳彦
2
1北里大学医学部泌尿器科
2奈良県立医科大学泌尿器科
pp.494-496
発行日 1999年6月20日
Published Date 1999/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902681
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日本泌尿器科学会の腎癌取扱い規約第3版によれば,7cm以下の腎腫瘍をT1とし,4cm以下をT1aとして亜分類している。腎部分切除術の選択的適応となるのは,施設間で多少の違いがあるにしても,T1aの腫瘍が主な対象となるものと考えられる。腎保存手術の遠隔成績は根治的腎摘除術と変わらないことから,最近では対側腎が正常の場合でも適応が拡大されつつある。腎部分切除術では,術中・術後の合併症がやや高い傾向があるが,これは単腎症例など腎部分切除術の対象としては技術的に最適でない症例が含まれることによるものと考えられる。対側腎が正常で選択的に小さい腎腫瘍に適応すれば,根治的腎摘除術と合併症の頻度は変わるものではない。
腎部分切除術の合併症として主たるものは,尿痩と腎不全である。尿痩の定義は個々の施設で異なり,したがって,合併症として報告される頻度にもばらつきがあるが,漏出液のクレアチニン濃度が血清の2倍以上で1日50ml以上,1週間以上持続して認められる場合を目安とする考えもある。尿痩を起こしやすい要因としては,4cm以上の腫瘍径の場合,腎杯腎孟の広範囲の縫合修復を要する場合,あるいはex vivoで多発する腎腫瘍の核出を要する場合などが統計学的にも有意な危険因子として挙げられる。
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